(David Smith: アイギーク株式会社社長/ヘッドギーク サンフランシスコ育ちの開発者。Open Vision, EMCなどを経て 米国Apple本社でOS開発に携わる。その後インターネットのベンチャー企業設立に関わり、2000年より日本でアイギークを起業し、東京に在住。Apple時代に2つの技術特許を取得。現在、Mac World参加のためアメリカ出張中)
MacWorld が今年も元気です!アップルの勢いは、近い将来Mac Worldを東京で再開させてくれるのでは、と思わせるほどの熱気を感じます。(東京でもはやくMac Worldをやってくれー)
今日(アメリカ時間1/15)、スティーブジョブズ氏のキーノート(プレゼンテーション)が行われました。ご存知の通り、キーノートは毎年、『アップル社がいかに魅力的に成長しているか』を伝え、また『画期的な新製品発表の瞬間』でもあります。
新しいOS Leopardの登場で、アップルの業績は右肩あがりのようです。Leopardが昨年の10月に登場してから、既に500万部のLeopardが出荷されました。
このキーノートで、ジョブズ氏は『Time Capsul(タイムカプセル)』というハードドライブつきAirport Extreme (ワイヤレス Ethernetベース ステーション)を紹介しました。これに伴い、Time Machineソフトウエアが進化して、Airport Extreme環境でよりよくバックアップが取れるように改善されています。
Airport ExtremeはUSBポートがついているので、外付けドライブをつないでネットワーク上で共有することができます。私個人としては、それほど画期的な新製品かな?という感じがしました。というのも、既存の諸機能を再編してみせた、という印象を持ったからです。 ワイヤレスタイムマシンがAirport Extreme限定でないのなら、利点といえば、ディスクドライブがバンドルされていて、2つのケースを利用するよりも、見た目がかっこいいということでしょうか。
どうかなー、と思う点もいくつかあるのです。まず、Time Capsuleの値段は、Aiport Extreme/USBコンボに比べても、そんなに悪くないと思うのですが、既にAirport Extremeを持っている方には、値段が高くついてしまうことです。次に、ディスクドライブが内部構造になっているということが気になります。ハードドライブに問題が生じたとき(ハードドライブはいつか必ず壊れます!)、製品をまるまる修理に出さなくてはならなくなるでしょう。3つめは、リストアはネットワーク上で行わなくてはならないということです。 この製品はGigabit Ethernet hubが組み込まれていますが、小さなNASデバイスでGibabitスピードのパフォーマンスは無理でしょう。Time Capsuleでのリストア作業は、FireWireやUSBドライブに比べて、とても時間がかかってしまうと思います。全体的に、そんなに悪い製品だとは思いませんが、個人的にAppleの目玉製品というほどではないように思います。アイギークとしては、早速新製品を購入して、Indelibleバックアップがしっかり作動するようテストしていきます。
次に、ジョブズ氏は新しいiPhone機能を紹介しました。まだ日本にiPhoneが紹介されていないので、この説明は省略しますね。iPod Touch はiPhoneで使われているものも含め、より多くのソフトウエアアップデートが紹介されました。より使い易くなりそうですが、既存ユーザーはアップデートに20ドルも払わなくてはならないんですね。少し高いかな?
ジョブズ氏が次に紹介したのは、iTuneを使って、レンタルムービーのサービスを受けられることです。現在のところ、このサービスは米国内だけのようです。『レンタル』ビデオを『ダウンロードする』という発想は、ユーザーにどう受け取られるのかな、というのが私の関心事です。使い易さや、どうユーザーに受け入れられるかを注目したいところです。値段ですが、新作映画が3ドル99セント、古い映画だと2ドル99セントです。Apple TVで HDバージョンの映画をレンタルする場合は、更に1ドルの追加料金がかかります。
Apple TV も進化しました。アメリカ国内で、Apple TVはまだそれほど成功しているとは言えません。新製品はコンピューターに頼らず、独立して作動するようになりました。しかし、DVDドライブなどはまだついていません。新バージョンではFlickr/Picasaに保存された写真を表示できるようになりましたが、この機能を使うにはコンピューターに接続している必要があります。アップル社はこれがゲートウエイとして、インターネットを介してコンテンツが売れるように狙っているのだと思います。個人的には、Apple TVの写真ディスプレイはとても気に入っているので、HDTV(ハイビジョンテレビ)がある人は、使ってみたくなるのでは。(私は買いたいと思っています。)DVDプレーヤ機能があれば、もっと魅力的なのに。
今、ハリウッドと映画業界では、著作権保護のためにいろいろな画策が行われており、全てのDVDに「デジタルコピー(コピー回数制限)」をつけるよう、ハリウッドは必死になっています。デジタルコピーを利用する場合、16桁のコード入力がもとめられるのです。通常のDVDより更なるDRMによって、映像が保護されているという仕組みです。私に言わせると、「ハリウッド業界はわかっていない!」のひとことです。DVDだって、そもそも映画のデジタルコピーな訳です。それに、多くのツールがDVD の保護を外す機能を既に提供しており、コンピューターユーザーなら、どのようにでもDVD が楽しめる現実があるのです。とくにiTuneとMac OSXが、Apple FairPlay DRM システムとうまく動作できるのでしょうから。(Windows DRMシステムは問題だらけだと聞いたことがあります。その点、Macユーザーは安心できるのではないでしょうか。)
今日のキーノートの最後に、ジョブズ氏はもっともエキサイティングな製品を発表しました。新しいMacBook Airです。この製品とともに、アップルがサブノートのカテゴリーに帰ってきました。アップル社の企業努力はすばらしく、業界でも驚く薄さと軽さを実現しています。13.3インチスクリーンに対し、重さはわずか1.36キロは画期的な軽さです。ノートパソコンの重量は、どうしてもスクリーンの大きさにあわせて制限が生じるのですが、この大きさのスクリーンに対して、1.94センチの薄さを実現しています。ただ、薄さとの引き換えに、内部オプティカルドライブとポートはあきらめなくてはならなかったようで、他のマシンのようにこれらは付属していません。MacBook Airには3つのポートがついているだけです。(ヘッドフォン用、USB用、ビデオ用- DVI, VGA, Composite, S-Videoが同じポートで利用可能)私としてはオーディオ入力、FireWireポート、Ethernet接続が欲しいところですが、この薄さでは難しかったのでしょう。
アップル社は、この製品を「2台めのMac」として位置づけています。ジョブズ氏が強調したのは、MacBook Airはワイヤレスネットワーク上で、他のコンピューターのオプティカルドライブを共有できるという点でした。共有できることは、OSのブートやインストールも含む全ての機能だそうです。私は、この製品は日本でとくに歓迎されるな、という思いで彼の話を聞いていました。日本では、2台の目Macというより、メインマシンとして位置づけるひとが増えるように思います。この一台だけでMacライフを楽しもうと思うユーザーには、外付けのUSB/CD/DVD 『スーパードライブ』が提供されています。
MacBook Airはアメリカの聴衆に、最も歓迎された発表でした。会場の全てのテーブルにはMacBook Airが展示されていました。ところで、噂されていたMacのタブレット版は発表されませんでした。今日のところ、これ以上のサプライズは報告されませんでした。明日、会場をくまなくまわって、いろいろな発見を皆さんと共有したいと思います。お楽しみに!